ニ ュ ー ス

2007/10/25
07年度大阪支部写真講座報告(概略)
尾辻弥寿雄先生を中心に終日熱心な写真論
 10月7日大阪市生涯学習センターにおいて、JRP本部から尾辻弥寿雄先生を講師に派遣していただき写真講座を開催しました。参加者は11名でしたが、尾辻先生を中心に終日熱心な写真論が展開しました。


高木輝雄さん 「淀川」 モノクロ カラー 約30枚
 1枚1枚は技術的に充分の力を感じる。しかし3 0 枚で組んだときテーマ性がはっきりしないために散漫になっている。いま日本のアマチュアのベテランが直面している課題でもある。単写真至上の考え方でやっていると写真が一連のテーマ性のもとに蓄積されてこない。1 枚1枚の写真が決まりすぎているのでテーマの広がりを狭くしている。そうした意味ではかって捨てた写真をもう一度拾い直してみるのもいい方法。今まで撮った写真を何回も並べてみて足りない要素を補っていく手法が必要。早い時期に写真展の開催を目標にするべき。まとめる力を養うと共に、きびしい批評を受けてこそ実感して伸びていく。写真の組み方については、淀川の「四季」や「上流から下流へ」等考えられる。しかしストーリや構成を考えても1枚1 枚が決まった写真では完結していてつながっていかない。その辺を考えてほしい。



加藤二三男さん 「岸和田などの祭・桜などの風景」 カラー約20枚
 祭は総花的には撮らない方がよい。自分のねらいを大切にしてみんなとは違う工夫して撮っみてはどうだろう。たとえば手や足だけを撮るとか、だんじりは絶対に撮らないではちまきや髪だけを撮るとか。それにいろんな祭を追い続けていると、どこへ行っても初心者でしかない。ひとつの祭をとことん追っかけてみるといろんな発見が新たな展開を可能にしてくれる。技術的には上手く撮れているので、加藤さんがなぜその祭へ行ったのか「動機」が見えてくるような写真になれば、個人的な写真が広がって他者に影響を与える作品につながっていくのではないだろうか。写真を組む場合は同じイメージのものはさけて伝えてくれるものががっていくように選ぶべき。風景なども花の時期だけでなく同じ場所1年間通ってみるといろんな見え方があることに気づく。その1 年で真ががらっと変わってくる。



藤村俊和さん 「新世界」 モノクロ  15枚
 新世界が変化していく中でごちゃごちゃした街の様子を記録したいと言う藤村さん。写真を組む場合、かっては起承転結を考えて組んだが最近ではまとまって全体として印象づける手法に変わってきている。ごちゃごちゃ感をいかに組み写真としてだすかだが、そのまえに1枚1枚の写真の左右に余分な部分があるのと、被写体を真ん中にもってくる傾向があるのが気になる。看板を撮り入れる場合も必要性を考るべき。1 枚1 枚の写真に力がありもっとがんがん撮っていってほしい。撮れば撮るほど重量感が増していくと思う。コントラストが少し強すぎると思う。プリンターでのモノクロ出力ではみんなが苦労しているが勉強してほしい。


梅田秀文さん 「千早赤阪村の棚田」 モノクロ 約30枚
 全国的に棚田が疲弊しているそれを守る運動も各地にある。撮る人も多いがその多くは棚田を風景として撮っている。しかし棚田は日本の農民が営々として守ってきたものであるとの視点が大切。それがないと棚田の風景が弱くなってしまう。人のいない棚田の風景は人の痕跡のあるものを選ぶ。人のいる棚田の風景はどうしてもロングになってしまう。しかしがんばっている人の気持ちが出るのはもっと近寄って撮ったもの。今後の課題としてがんばってほしい。夏の写真がないが1年間をつねげて見てみたいのでぜひ撮ってほしい。それから部分を撮る場合も棚田を撮っているという意識を持って切り取ることが必要では。棚田の高度感をどうだすのかも今後の課題。



玉井質さん 「大阪城」 カラー 約30枚
 イベントを中心とした大阪城の風景。1 点1 点の写真はおもしろいが、写真としては大阪城と、こうしたイベントの写真とをからめて見るのは難しいと思う。女子マラソンの写真などはイベントが勝って大阪城は影が薄くなってしまった。日常の風景とからめる方が時代性が感じられるのではないだろうか。その場合人物の後ろ姿が多いが後姿は弱い。大阪城を主題にして、歴史観を強く感じられるようなカットが欲しい。ストロボを使う場合はストロボをカメラから遠ざけその角度を工夫して立体感や質感をだすように研究して欲しい。リバーサルとネガの特性を考えてそれに見合った撮り方も研究課題にして欲い。野良猫の写真はおもしろいのでは。5 0 0 ミリの世界だがひたすら「野生」を撮って欲しい。


楳田尚克さん 「喜寿を迎えた同窓生」
 楳田さんが同窓生のアルバムを作成中であるが、そのアルバムについて、写真の数や配置・文章の入れ方など、アルバムの各ページのレイアウトについてアドバイスが続きました。ポイントポイントで変化を付けながらも、各ページの統一性を確保することが大切挿入している風景写真も季節順を考えて組んだ方が見やすいのではないだろうか。「写真がたまる、だから本にする」ではなく「本にするから写真を撮りに行く」心構えで取り組む。その場合集まった写真を涙をのんで棄てていくという行為の中で内容がすっきりしてくる。キャプションや見出しの入れ方などについてもその同一性について配慮して欲しい。要は個々の写真はとても良いからそれらを生かしていく方法を考えることが大切。



三枝妙子さん 「パンダ」 カラー 約30枚
 5〜6年くらいかけて白浜や中国に通ってパンダを撮り続けてきた。その中から3 0枚を選んできたもの。プリンターの調子が悪くて色かぶりが出てしまった。作品を組んでいくと変化に乏しいと思う。もっとパンダの表情を見ることが大切。「飼われている」野生でない動物特有の表情を探して欲しい。そのためにも望遠系のレンズをもちいて、アップの中での表情の違いを見たい。三枝さんの感情がパンダに投影している写真も数枚ある。それらは他では見られないパンダの新鮮な姿が浮かび上がっている。そういう写真をもっともっと増やして欲しい。今後の課題としては、孤独性の表現の仕方について取り組んではどうだろうか。



柴田太一さん 「子供たちのワークショップ」 モノクロ16枚
 子供の表情もおもしろいが、親の表情もおもしろい。子供の物を作るときの喜びや感動を撮ってはいるが、切り撮り方が広いために大人が大きく写ってしまって大人の世界の写真になってしまいがち。子供との距離感やアングルに変化をつけて撮ると、おもしろい写真になるのでは。画面作りが自分本位で、被写体本意になっていない。写真はきれいに決まっていて安心感はあるがもっと冒険をしてどうだろう。話かけながらシャッター切るくらいの距離で撮ってみると、子供の好奇心が全面に出てくるようになるのでは。写真の仕上げなども含め「標準的」でバランスも取れている。しかし「最適」ではない。そこを突破できると写真に個性が出てくる。新しいイメージに出会うために自分で悪戦苦闘していく。その過程で身に付いてくる。



福岡崇夫さん 「中国の大連・ハルピン・旅順」 モノクロ45枚
 人物のスナップがおもしろい。とくに子供たちの様子、しぐさがとて
もおもしろい写真になっている。外国の子供たちを撮る場合タイムラグの作り方の工夫が必要になってくる。日露戦争などの戦跡の写真は押さえるところはきちんと押さえたいい写真になっている。過去の悲惨な歴史を感じさせる写真になっている。焼きの調子と写真の内容との関わりでも、コントラストをすこしあげて情感を盛り上げることに成功していると思う。



岡田満さん 「熊野の森と祭事」 モノクロ・カラー 各30枚
 祭の写真は民族を感じる写真。しかしモノクロの森の写真と比べて浅く感じる。神々しさがない。しかしカラーをモノクロで出力しても良くなるかどうかはわからない。ノーマルではなく色で表現する手法が必要になってくる。岡田さん本人が現場で、ある種の神秘性を感じていたのかどうかがポイント。指針となるような一歩踏み込んだ写真が欲しい。



山田しず子さん「三多気のサクラ・イタリア旅行写真など」約20枚
 人物を撮る場合後ろからばかりだと弱い。遠くからばかり撮らないで近寄って声をかけると気安く撮らせてくれる。光線の見方がとても良い、被写体を半逆光で撮っているから立体感がよく出ている。しかし画面に文字が入ってくると、見る側の注意がそこに行って写真を見てくれないので注意が必要。サクラはたまに行くのではなく1 年をかけてつきあってみると見方も変わってくる。サクラの美しさを際だたせるために、露出を被写体のどこでとるかも大切でありその工夫を考えて欲しい。その場合リバーサルフイルムを使った時は3 分の1 段階で段階的にシャッターを複数枚撮っておくことが大切。三脚を使う場合レリーズを使うようにしないと指で押すとかえってカメラブレを起こしてしまうので注意が必要。


尾辻弥寿雄先生の講義 写真集「長崎照射の夏」から
 はじめに写真集の原稿となったオリジナル写真を見せていただきました。その焼きの重厚で緻密なモノクロ写真の美しさに参加者は一様に感嘆しました。

 次ぎに写真集「長崎照射の夏」の製作過程の中から教訓的な話をしていただきました。( 要約)

 少しアンダー気味に撮って中間調をとばし気味にしてコントラストを高めた。夏の太陽の光と影を感じられるような調子に仕上げた。レンズは基本的に21・50・200 ミリの3 本を使た。印画紙は2 号あるいは2.5 号を使っている。

 長崎市民が8 月を迎えた普通の姿を6 年間撮ってまとめたの。自の長崎らしさを探して撮ってきた。長崎一般ではなく、原爆やキリシタンやもろもろの重層化した歴史を撮りたかった。長崎が一番暑い時に自分の長崎があると思って毎年8 月に長崎に通っている。観光写真ではなく、反核運動のための写真でもない普通の素顔の長崎撮った。2 〜 3年で撮ったものにあと1 〜 2 年で足らないものを埋めていった。新旧のものを並べながらいいものだけをセレクトしていく。アマチュアはまとめることをしないがそれをしないと自分の課題が見いだせない。多くは1 枚写真にこだわってしまって何年たっても写真がたまってこない。そしてまとまったものを他人に見せることが大切。他人の目にさらすことによって写真が良くなっていく。

 とても貴重な話を聞くことができました。大阪支部の会員の課題もそろそろ個展を視野において作品をまとめる段階に来ていると思います。写真の見方考え方、そして組み方、とても感動的な時間を過ごすことができました。尾辻弥寿雄先生ありがとうございました。(以上文責岡田)




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